神保町花月に栞菜

13日から昨日までの6日間(全7公演)、神保町花月で上演された舞台「キミハ・シラナイ」に栞菜(有原栞菜)さんが出演したので、一昨日の夜公演と昨日の千秋楽の2公演を実際に観劇しました。

神保町花月は主に吉本の若手芸人が漫才やコントでなく、新喜劇でもない芝居をすることを目的とした劇場で、週替わりで色々な芸人たちが舞台に登場しています。栞菜が親友・梅田えりかさんとゲストで出演し6月に同所で開催された「菊地と林のアイドルパンチ!」でも、梅さん・栞菜ともポテト少年団菊地智義やかたつむり・林大介らから神保町花月の「本公演」(芸人主体の舞台をこう呼ぶ)への出演のお誘いを受けました。そして、神保町花月の舞台に栞菜の出演が正式に決まりました。

今回の「キミハ・シラナイ」、主演は今回が初主演のシソンヌ(じろう、長谷川忍)。他の出演芸人はブロードキャスト(吉村憲二、房野史典)、前述のかたつむり林、そしてピン芸人のソドム。また栞菜とともに客演として劇団クロムモリブデンから幸田尚子さん(前にも神保町花月の舞台に出演)も出演。今回の出演者のうち、栞菜より芸歴が長いのはブロードキャストと幸田さんの3人だけ。かたつむり林は栞菜と同じ2004年デビュー。シソンヌは栞菜の1年後輩、ソドムは4年後輩にあたります。


「栞菜」としての舞台デビューからもうすぐ1年、「キミハ・シラナイ」で舞台出演も5本目と経験を重ねています。ですが、その栞菜にとっても今回は初めてなことが多い舞台でした。特に大きかったのが、芸人メインの舞台なので必然的にアドリブが多くなること。単に台詞を覚えるだけでなく、何が飛び出すか分からないアドリブに即座に対応することも必要になります。また、神保町花月の舞台の大きな特徴として、慣例的に稽古は0時頃〜5時頃の深夜(たまに早くなってもせいぜい19時頃からの夜間)という遅い時間帯に実施。いくら夜更かしさんな栞菜とはいえ、さすがに3時〜5時くらいは普段寝ている時間帯なので相当きつかったと思います。

実際に神保町花月に足を運ぶと、吉本の若手芸人がメインの舞台なので客も芸人目当ての女性(栞菜と同世代くらいの女の子も多数)ばかり。その中に栞菜ヲタらが割って入る形でしたが、これでも普段の本公演と比べ男性の割合が「異常に」高かったそうです。公演開始当初は千秋楽のみ完売という状況でしたが、いざ公演が始まると急にチケが売れ出し、自分が入った一昨日も昨日の千秋楽も最終的には完売で補助席も大量に出る盛況でした。


もう昨日で舞台も終わったのでストーリーに触れると、物語は今から50年後の未来を舞台に、勝彦(シソンヌじろう)・隼人(シソンヌ長谷川)・良太(ブロードキャスト房野)の幼なじみ3人を中心に進みます。大学生の良太が引きこもりの勝彦への誕生日プレゼントとして10日間限定で借りたのが、NHO(ニュー・ヒトゲノム・オブジェクト)なる、遺伝子工学を駆使した人間に非常に近い物体。この「川崎由紀」という女性型NHOを栞菜が演じました。NHOはレンタル期限に達した場合、及び自らが人間でないと認識した場合に停止処理が走る仕様になっているそうです。

三次元と接するのが嫌いな勝彦は最初由紀を避けていましたが、色々な出来事がありながら次第に由紀のことを好きになっていき、7日後には勝彦と由紀が外でデートするまでに。ところが、直後にトラブルでホスト隼人の女性客(幸田さん)を由紀が傷つけたため、良太の発言がきっかけで由紀の停止処理が実行。そして記憶がどんどん消去されていく由紀を勝彦が抱きながら、由紀の最期を迎えました。

そして約束の期限日に勝彦が由紀を抱えて戻ると、NHOの営業担当・伊集院(ブロードキャスト吉村)が、なんと勝彦に向かって停止処理を実行。実は勝彦も良太が発注したNHOで、NHOの権威でもある自らの指導教授に裏金を払って実現したもの(本来死人をNHOで蘇らせることは不可)。これで隼人と良太が二人きりになりましたが、ラストシーンでなんと隼人もNHOとして停止処理が実行。

実は冒頭部分で三人が隼人運転のエアカーに乗り、助手席の勝彦の誤操作で事故が起きるというシーンがありました。三人とも奇跡的に生きているという流れで話は進みましたが、実は生還したのは後部座席の良太一人だけ。事故の大本のきっかけは、勝彦が会ったこともない「由紀」という女の子とデートすることになり、その下見をしようと良太が言い出したから。二人を死なせた責任を感じた良太が、勝彦と隼人を裏金でNHOとして復活させた上、更に由紀をNHOとして発注して勝彦とのデートを実現させました。後で振り返ると、途中の色々な伏線もここにつながってきます。


今回の舞台は前半と後半でだいぶ性格が異なり、前半は芸人の舞台らしく笑いの連続。てか、自分が観たのはラスト2公演だったのでアドリブ以外の原型がどれだけ残っているか分からないぐらい(栞菜も含め)どの出演者もいい意味で「壊れて」いました。一方、後半は芸人メインとは思えないほど各出演者も真剣にストーリーに嵌まっていて、特に由紀が自らをNHOとして認識しだした頃からは泣く女性客が続出。ここまで泣く客の多い舞台に遭遇するのも珍しく、千秋楽では自分も危うく泣きそうになりました。

そんな舞台で栞菜は、場面に応じて満面の笑顔や哀愁の表情等持ち前の喜怒哀楽を使い分けながら、時には芸人を足蹴に、また時には自らも芸人色に染まりつつ、アドリブにもしっかり対応した演技を披露。1年近く前の最初の舞台「アリスインデッドリースクール」ではどこかぎこちなさがあった栞菜も、この1年間に舞台や映画等を経験するうちにだいぶ自然体で演技ができるようになってきました。その栞菜の演技がどうやら芸人目当ての女の子も気に入ってくれたみたいで、今回の一風変わった舞台で栞菜が女優としてまた一歩成長してくれたと思っています。

栞菜以外で個人的に特に印象に残った演技をしてくれたのは、良太役のブロードキャスト房野と、狂気の演技を見せつけた幸田さん(前回の神保町花月でも「芸人を食う」と評されたらしい)。あと、良太と同じ大学に通うインド人・チャイ役のかたつむり林もいい味出してました。


こうして芸人ファンにも好印象をもたらした栞菜は、終演後のカーテンコールではひと味違った(素に近い)姿を披露。過去2回のアイドルパンチでも芸人と互角以上に渡り合った栞菜なので、ここでも芸人いじりを炸裂。特に元々ブスキャラで知られるシソンヌ長谷川には(舞台の本編も含め)何度も公然と「ブス」を連呼。土曜夜では本来主役として締めの言葉を言うべき長谷川がグダグダになった隙に、客演の栞菜が締めくくって場内大歓声で長谷川だけ当惑(爆)

また千秋楽では芸歴の長いブロードキャスト房野に「演技がうまい」と褒めながら「楽屋のほうがツッコミがうまい」と毒を吐き、「次は芸人でなく俳優として出演しては」と妙なススメをするなど、こちらも栞菜らしさ全開の暴走トークでした(爆)